松山さん、松山さん
噺歌集Wより抜粋(’85.3.11. 鹿児島市民文化ホール)
千春がねえ、松山某という歌手ですが(笑)、「まさし、ゴルフ覚えろ」ってうるさくいうんですよ。で、四年ぐらい前から始めたんです。
最初、僕はゴルフを馬鹿にしてたの。「冗談じゃないッ、ゴルフを始めたらなッ、もう、人生終わりだッ」みたいなことをいってた。「バカヤロウ、一部の特権階級があんな広い土地を独占するとはけしからんッ」などと、いろいろいってたんです。始めたら、おもしろくておもしろくて(笑)。あれで金がかからなきゃ、最高だと思うんですけどね。
この間、四国にコンサートツアーで行きました時、四国の友だちと一緒にゴルフをやったんです。で、半分終わりまして、食事の時間に売店を通りましたら、売店のおばさんが呼びとめるんでよよね、「ま〜つや〜ま〜さんッ」(笑)まさか僕のことだとは思わないから、スーッと通りすぎたら、「松山さん、松山さん、松山さんッ」(笑)おばさんが追っかけてくるの。
ははあん、僕のこと、千春と間違えてるなって思ったから、振り返って顔を見せれば気がつくだろうってんで、「僕のことですか?」って振り返ったら、おばさんが「ほ〜らッ、松山さんッ」(爆笑)もう、気が遠くなりましたよ。
「僕、違いますよ」
「松山さん、サインしてよォ」
「僕、ほんとに違うんですよ」
「そんな意地悪いわないでェ。知ってんだから、あたし、くわしいのよ。娘がファンなの、ねえ、娘のためにサインしてってよォ」
ここでサイン断ったら、千春の評判が下がると思った(笑)。友だちの評判下げるわけにはいかないですからね、書きましたよ、松山千春って(爆笑、拍手)。
そしたら、おばさんがそれを抱きしめて
「嬉しいッ、これで娘に自慢できるわ、ありがとう、松山さんッ」(笑)
わたしは後味が悪くってねえ。だって、あいつのサイン、どういうのか知らないから、漢字で大きく松山千春って書いただけなんです(笑)。O型はこういう字を書くんだろうなとか思ってね。
で、またゴルフ半分やって、帰り、シャワーでも浴びて帰ろうかって、またその売店の前を通ったんです。そしたら、同じおばさんが、
「さださんッ」(爆笑)
「僕でしょうォ」
「や〜だ、さださ〜ん、嘘ばっかりついてェ」
俺が嘘ついたんでないッ、おばさんの期待を裏ぎらなかっただけなのにィ(笑)、ねえ。
「さださ〜ん、サインしてってよ」(笑)
「ええーッ、僕もですかァ?」
「サインしてってェ、お願いだからァ、娘がファンなのよォ」(爆笑)
どんな娘だッ、わたしは思いましたけど、しょうがない、書きましたよ、松山千春と書いた裏にね(笑)、みじめェ〜。
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