ヤブヘビだった話
噺歌集Tより抜粋(’79.4.12. 倉敷)
あの頃、ぼくはよく先生に張り倒されてね。うちの学校っちゅうのは、よく先生が生徒を張り倒した。ポカァーン! だからひっぱたれるというのは慣れてたんですよ。
ぼくはね、マンガが得意でね。マンガを書いては、クラス中にまわしたりなんかしてたんです。で、ひとり笑い上戸なヤツがいてね。ぼくのマンガを見てね、ウハハハ...なんて大声で笑うヤツがいるわけですよ。で、そいつが授業中に笑ったんで、化学の先生に怒られましてね。
「オマエ! その紙持ってこい!」
持っていったら、おもしろいマンガあるわけですね。で、先生もニヤーッと笑ってね。
「誰が書いた」
っていうんです。そいつはやっぱり男の義理としてね、
「それはいえません」
だけどぼくはね、あの野郎、チクショウ、なんであんなところでデカい声で笑うんだろうと思って、悔しくてね。あんまり悔しいんであとでそいつに、
「オイ、おまえ、担任が呼んでるよ」って嘘ついた。「...怒ってるよ、担任が。おまえがあんなところで笑うから。早く謝ってこい!」
するとそいつ、ほんとうに謝りに行きやがってね、職員室へ。
「先生、すいませんでした」
「おまえ、なにしにきた」
「えっ? 先生呼んでるって...」
「先生、呼ばない。何した。何が悪かった」
「あの、化学の時間...」
「化学? 化学の先生、こいつなんかやったんですか? マンガ? 誰書いた? 佐田? 呼んでこい!」(爆笑)
ヤブヘビでねえ。で、うちの担任ってのはゲンコツでひっぱたくか、平手でひっぱたくか、生徒のリクエストに応じてたんです(笑)。で、ぼくも諦めて職員室へ行ってね。
「先生、なんか用ですか」
「用ですかじゃない! 胸に手をあてて考えてみろ!」(先生の胸に手をあてるポーズ)
「オレの胸じゃないんだ」(爆笑)
と先生、「これか、これか」グーとパーを出すんですね。わたしも当時茶目ッ気たっぷりでしたもんで
「これだ!」
とチョキを出した(爆笑)。 そしたら、先生ってのはやっぱりウワ手でね、
「おめえこれ(チョキ)なら、先生はこれだ(ゲンコツ)」
っていってね、負けましたねえ(笑)。痛かった。
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