第82回全国高校野球選手権大会観戦記

 

平成12年8月13日日曜日午前6時30分、応援団は学校へと集合した。この日の朝は5時起床のため、前日は「寝酒を…」と思って行きつけのスナックへ行った。22時頃には帰るつもりだったのに「えっ?丹原高校の先生?明日頑張って下さいね」なんて言われた日には…。見ず知らずの人からも祝福を受け、改めて甲子園パワーの凄さを感じました。で、結局1時30分まで呑んでました…(^^;;;;)。二日酔いどころか、完全な飲酒状態での登校(^^;;;;)。

参加者は、1,2年生全員と3年生の希望者、合計約600名。それに地域の方々のバスが数えきれないくらい…(^^;)。いやホント、凄い数の人なんですから。緊急連絡用にと、バスの各号車ごとに携帯電話が渡される。今回の移動等を計画してもらった旅行社の準備によるものである。うーん、時代は変わった(^^)。途中、使い方を知らない先生(携帯を持ってない先生もいますからね)が電源を入れてないことが判明。携帯の意味がないっ!(^^;) 電源の入れ方と使用法を少しだけ説明して、無事緊急連絡用の武器に昇格(^^)。

高速道路に乗り、途中2度ほどの休憩を取りながら正午頃には現地到着。でも、バス駐車場から甲子園までは結構遠かったりする…。1,2キロあったかな?その道沿いに多くのお土産屋さん…。さすが関西商人、恐れ入った(^^)。 とある店のおばちゃん「丹原高校のみなさん、おめでとう。私、実は丹原出身なのよ」と何となく伊予弁(笑)っぽい言葉で買い物に誘っていた。おそらく数分後にそこを通るであろう光星学院の応援団には、何となく青森弁(笑)っぽい言葉で語りかけていたことだろう。全国47都道府県の言葉を巧みにあやつるおばちゃんなのかもしれない(笑)。

球場につくと、まだ前の試合が7回の攻撃中くらいで球場の外で待ちぼうけ。そこで何気なく目についた「阪神タイガース資料館(入場無料)」の文字(爆笑)。あそこが俺を呼んでいる(笑)、ということで、虎ファンのO先生、U先生と共に、時間つぶし(笑)のため仕方なし(笑)に中へ入り、ついでだから(笑)、阪神グッズを買い込む。ここへ来た目的達成…? いや、違う違う。試合はまだだった…(^^;;;;;;)。

資料館での暇つぶしを終えしばらくするとアルプス席へと移動出来た。前の試合がまだ行われていたので、端の方で待機。試合終了と同時に入れ替わる。生徒約600人に、地域の方々を含めるとアルプス席が超満員に…。もう椅子に座れなくて階段に座ってもぎゅうぎゅう詰め、という状態。丹原町ってこんなに人いたんかいな?今地元に人残ってるのかいな?と余計なことを考えてしまう程の数であった。これだけの数の人が感心を持ってくださり感謝m(_ _)m。

丹原
光星 10

 初回、スタンドから見ていても明らかに堅さが見られた。2アウトから宮川がヒットで出塁するも牽制死、その裏いきなり先取点を奪われ、嫌なムードに…。しかし、愛媛県予選で4割を越えたチーム打率は本物だった。2回にあっけなく逆転、3回にも追加点をあげ、試合はあきらかに丹原ペースへ。

今思えばポイントは5〜7回の攻撃だった。あと一本出ていれば、大量リードで勝利はほぼ手中に、という状況を5回の1点に抑えられていた。その、あと一本が出るか出ないかが、地方大会と全国大会の差なのかもしれない…。7回裏に3ランで逆転を許すが、8回に連打で一度は再逆転した。これが今年のチームの強さなのかもしれない。地方大会の大洲戦でみせた力を、甲子園でもしっかりと発揮した。

結局、春夏通じて4度目の出場の光星学院に甲子園での初勝利をプレゼントしたことになる。春夏通じて初出場の本校よりも、勝利への執念が勝った、というところだろうか?でも、負け惜しみでも何でもなく、どっちが勝っても不思議ではない好ゲームであった。実際、放った安打18は、光星学院よりも多かったのだから…。

愛媛大会でここ数年、甲子園への大きな壁が存在した。その壁をようやく突破した昨秋。あと1勝と迫った四国大会で無念の敗退。またも甲子園は幻に終わる。そして、ついに念願叶って初出場。残念ながら敗れはしたが着実に階段を一歩一歩登っている。甲子園初勝利。もうそんなに遠くないはずだ。

蛇足ですが…。

十数年前にさだまさしが『甲子園』という曲を作っている。「喫茶店のテレビでは夏の甲子園。準決勝の熱気が店のクーラーと戦ってる」ではじまる曲は、「背番号14の白いユニフォームが、彼の青春の最初で最後の打席に入ったところ」で終わる。当時の高校野球は、やまびこ打線の池田高校の全盛期。6月に「甲子園」が発表された年の8月の夏の甲子園準決勝。春夏連覇を狙う池田高校は、桑田清原のいるPL学園に敗れた。その時の最後の打者が背番号14…。単なる偶然といえばそれまでだが、さだファンの間では、予言だ、と話題になった。

毎年8月6日。広島に原爆の落とされた日に長崎で無料野外コンサートをさだまさしは開いている。「広島の日に長崎で歌う。それだけで伝わる人には伝わる」と彼は言う。その長崎から2000で、今年久々に『甲子園』を歌った。

そして、この試合。8対10の9回表の丹原高校の攻撃は1アウトランナー1塁。代打をコールされたのは背番号14の白いユニフォーム。不謹慎にも虎キチ@愛媛は『甲子園』のメロディーを頭の中で奏でてしまった…。結果、彼はショートゴロでダブルプレー。最後の打者となってしまった。歌と違うところは、準決勝でないことと、彼はまだ2年生。おそらく最後の打席ではないだろうこと。これまた単なる偶然なんだけど、なんだか書かずにいられませんでした。

試合終了後、光星学院の校歌が流れ、両チームの選手達が応援団席に向かって一礼、というテレビでもおなじみのシーンが目の前で行われる。その余韻に浸る間もなく、甲子園の場内担当から「応援団の入れ替えを行います。丹原高校はすみやかに退場願います」の声が…。そりゃ、向こうも仕事だから仕方ないだろうけど、もうちょっと配慮してくれたってねぇ…。

球場からバスの駐車場までの移動に時間がかかるため、少し余裕を持って試合終了後1時間後にバス発車、となった。移動しながらお土産を買い求める者、ジュースや食べ物を口に頬ばる者、いろいろであった。しかし、何人の生徒から言われただろ「先生、阪神グッズ買ったやろ!」って…(^^;)。何で「買った?」という疑問形でなく「買ったやろ」の断定形なんだ…(^^;;;;)。確かに買ったけど(^^ゞ

17時30分過ぎ、行きと同じ道のりを今度は逆にたどって行く。お盆、ということも影響してか、やや渋滞に巻き込まれながらも、22時30分過ぎに丹原高校に到着、解散となった。1日のバスの移動距離は800km近くにも及んだ。勝てばもっと嬉しかったけど、勝者と敗者の差なんて微々たるもの。来年に繋がるいい試合だったと思うし、応援団も甲子園を経験して、一回り大きくなったことだろう。『甲子園』の中の1フレーズ「敗れて消えたチームも、負けた回数はたったの1度」が心に大きく響いている。

下の写真左は、2番センターで甲子園の土を踏んだクラスの生徒のお土産です。瓶(高さ約5cm)は甲子園近くのお土産屋さんで売っていたそうですが、当然中身は空っぽ。残念ながら甲子園の土はどこにも売っていません。彼の大切な思い出の一部を無理言って分けてもらいました(^^)。また、写真右は野球部長からのお土産。甲子園練習で使用したTigersの刻印入りの硬球。タイガースの選手が練習で使用している中から古いボールを分けてもらった中から1ついただきました。どちらも大切な宝物です(^^)。

    

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追記
レギュラーの半数以上が2年生で甲子園出場を果たしたこの翌年、愛媛県大会第1シードに選ばれ2年連続の甲子園の期待は大きかった。が、4番でエースの長野が腰を痛め初戦から2、3番手投手を繋ぐ野球でなんとか勝ち上がる厳しい展開。準々決勝で甲子園でもおなじみの古豪・松山商業高校と対戦し、途中までは2番手投手で切り抜けていたが、後半に入り傷だらけのエースの登板となる。1−1で迎えた終盤、1本出ればリードを許す、という場面で登板しなんと三者連続三振。続く回もまたまた連続三振でピンチを脱する。お前ホントに腰痛めとんのか、と思うような恐るべきピッチング。しかし、最終回に力尽きました。

ツーアウトから3番打者に2塁打を打たれ迎えた4番打者。誰がどう見ても敬遠の場面で勝負を挑み、結果サラナラ打を許します。勝つことだけに執着しておよそ高校生らしさがなくなりつつある中で逃げなかった、負けたことは悔しかっただろうけど悔いの残らない、長野らしい勝負だったと思います。2年連続出場はならなかったけど、愛媛県高校野球史に残るような好試合でした。

丹原
松商 1x

ちなみに松山商業高校はこれで勢いをつかんだのか、夏の甲子園に出場。全国ベスト4まで進んだ。前年甲子園初戦で敗れた光星学院もベスト4。そういうチームと対戦して好試合を続けていることからも、丹原高校の強さは本物でしょう。周桑郡丹原町にある唯一の学校で、郡部の学校が甲子園に出場するのは確か県内では南宇和高校に継いで2校目。俗に言う野球留学の生徒はほとんどいない中、地元の生徒を中心にチームを構成している。

得点シーンでは全選手がベンチの前で輪になってガッツポーズと共に声を張り上げる。そして勝利の後の校歌斉唱では腹の底から大声で叫ぶように嬉しそうに歌う元気なチーム。自分自身は平成14年春に転勤しこの学校を去ることになりましたが、そんな伝統を守りつつ、いつの日か甲子園で「♪そよかぜが吹く〜」と校歌が流れる日が来ると信じて1ファンとして応援し続けていこうと思います。