『償い』効果

 

2001年4月、東京・世田谷区の東急田園都市線三軒茶屋駅で銀行員の男性が殴られ死亡した事件があった。傷害致死罪に問われた当時18歳の少年2人の判決公判が2002年2月19日に東京地裁で行われ、山室恵裁判長は求刑通り、それぞれ懲役3年以上5年以下の不定期刑とする実刑判決を言い渡した。閉廷寸前になって、反省の色が見られない少年2人に対し、裁判長は「唐突だが、さだまさしの『償い』という歌を聴いたことがあるだろうか」と切り出した。うつむいたままの2人に、「この歌の、せめて歌詞だけでも読めば、なぜ君らの反省の弁が人の心を打たないか分かるだろう」と少年の心に訴えた。

この裁判のあと、新聞社やテレビ局がさだを取材に。これに対しさだは「法律で心を裁くには限界がある。今回、実刑判決で決着がついたのではなく、心の部分の反省を促したのではないでしょうか。この歌は実話であり、被害者の奥さんからこの話を聞いた。相手を許すことの出来た奥さんにも感動したし、そうさせた若者にも感動し、この歌を作った。この若者は命がけで謝罪した、人の命を奪ったことに対する誠実な謝罪こそ大切である。裁判長はそのことを2人に訴えたかったのではないでしょうか」と語った。読売新聞や「ニュースの森」(TBS系列)、「Jチャン」(テレビ朝日系列)のニュース、そしてワイドショー等でもこれを取り上げ、ザ・ワイド(日本テレビ系列)では6分を越える『償い』の全曲を流したり、週末のブロードキャスターやサンデーモーニング(共にTBS系列)等でも大きく取り扱われた。

驚いたのは、今回のツアーに『償い』が元々組み込まれていたこと。裁判長がさだまさしのファンでこのツアーに参加して印象に残ったから引用したのか、それとも単なる偶然なのかはわからない。しかし、以前...。「喫茶店のテレビでは夏の甲子園 準決勝の熱気が店のクーラーと戦ってる」ではじまる『甲子園』という歌は「背番号14の白いユニフォームが 彼の青春の最初で最後の打席に入ったところ」というフレーズで終わる。この曲が発表された年の夏の甲子園。夏春連覇を成し遂げ当時無敵であった徳島・池田高校が、夏春夏と3期連続優勝を狙った甲子園の準決勝で大阪・PL学園に破れた。その時の最後の打者が背番号14であった。不思議な予言(?)が続くものです。

この騒動の後、20年以上も前に発表された『償い』が収録されているアルバム「夢の轍」の問い合わせが殺到したり、偶然発売前であった「さだの素」(『償い』が収録されているベスト盤「感動の素」を含む3枚組ベスト盤)の予約が増えたらしい。ちなみに「感動の素」は3月18日付オリコンチャート(集計は3月4〜10日)で3780枚で第78位、発売されて5年後に異例のランクイン。また、鹿児島のコンサートで立ち見が出るなど、各コンサート会場でもちょっとした『償い』効果が見られた。元々この歌がさだまさしの中のBEST1であった虎キチ@愛媛にとっては「何を今さら。この歌がいいことくらい知ってたよ」ってなもんでしたが、コンサートで「償い」が始まると拍手が始まるなどの異常な盛り上がりは、この曲の持つ意味を考えても「それはないでしょ」とにわかファンに少しがっかり...。

蛇足ですが、虎キチ@愛媛PAGEのこの週の訪問者が他の週の5〜10割程度増加した。これもちょっとした償い効果、かな?(^^)

 

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