メンバー紹介
   噺歌集Uより抜粋(’82.6.6. 白川村立白川中学校体育館)

さて、この辺で、今日一緒に来てくれているメンバーの紹介をさせてください(拍手)。
(ピアノの信田氏、スロージャズを弾きはじめる。「信田さァ〜ん」)
ハハハッ。何きどって弾いてんのかと思ったら「蝶々」を演奏しております(笑)。

えー、ピアニストとしてもアレンジャーとしても大変な活躍をしてくれております。松田聖子さんの一連の曲の編曲でありますとか、あるいは去年ヒットしました榊原まさとし君が歌ってくれた「不良少女白書」なんかの編曲を、彼は担当しております。本当にアレンジャーとしても素晴らしい活躍をしておりまして、またピアニストとしてもお聴きのように、大変素晴らしいピアニストに……、憧れております(笑)。お父さんこと、信田かずおさんです。あのォ、のぶたというのは野の豚と書かないように(笑)、信じるに田んぼで信田さんです。よろしくどうぞ(拍手)。

隣のギタリストですが、彼は非常に性格が暗い(笑)。この間、東北へコンサートに行きましてね、そん時に楽屋があるんですが薄暗い楽屋でしてね、でそこへ彼は一足先に一人で入ってた。と僕達はあとから楽屋へワァーッと賑やかに入ったんです。

すると彼が壁の方へ向かって暗い声で何かね、演奏してんです。何を演奏してんだろうかと耳を澄まして聴いてみると、「精霊流し」を静かに弾いてるんです(笑)。ゾクーッとしましてね(笑)、楽屋は薄暗いんです。その隣りに民家がありましてね、民家に犬が一匹いたんです。(バックは不気味な演奏を始める。照明も薄暗くなる)。あのねッ、照明さんまで一緒になって盛り上がんないようにねッ(爆笑)、ほんとに乗りやすいんだから、うちのスタッフはッ(笑)。その犬がね、彼のギターに合わせるようにして、アウォーン、ウォー、ウォーン。僕等はゾーッとしましてね、思わず後ろから声をかけたんです。

「坂元ォ、坂元ッ、どうしたんだッ」
彼はギターを弾きながらね、スーッと振り返ったんです。振り返ってね、こう、顔の半分だけでニーッと笑ってね(笑)、くらァい声でね、
「まさし君、いい歌だねえ」(爆笑)

ハハハッ、もう暗い暗い(拍手)、たまんないんすけど。(坂元「みんな信じるじゃないか」)皆信じるじゃないかって本当のことじゃないかァ(笑)。でも本当にギタリストとしてはとっても素晴らしい…(坂元、手で否定する)、照れなくったっていいじゃない、なにもォ(拍手)。ほんとにあのォ、彼は…、本人は照れてますけど、本当のことだからお話するんです。ほんとに彼はとっても素晴らしいギター…を持っているんです(爆笑)。ギターの坂元昭二君です。どうぞよろしく。

えー、以上でまともなメンバーの紹介を終わりまして、異常なメンバーの紹介に移りたいと思います。右側のマリンバ奏者の彼、もう大変有名になりました。素晴らしいマリンバ奏者であります。ただ、この男は何を考えとるんやわからんのです。

まず、見事に漢字が読めない。これは見事なもんであります。大学をちゃんと出ております、首席で。ということは多分、中学も高校も出たはずでありますが、中学生でも読める漢字が読めない。高知県のちという字を平気で地面の地という字を書きます(笑)。それで平気でその手紙を出すというこの強さ、それが届くという怖さ(笑)、日本の郵政省は素晴らしいであります(笑)。

山形へコンサートツアーに行きました、最近。その日の夜、二人で焼き肉を食べに行きました。彼は注文する時にはえらそうに格好つけていうんです。で、お姐さんを呼んでね、
「ああ、お姐さんッ、僕ね、あのォ、もがみうしのロースねッ」
「……」
お姐さん、意味がわからなくてね、立ち往生、
「もが、もがみうし?」しばらく考えてる。
「もが…、ああ、最上牛ロースねッ」(爆笑)
なんて話がありました。

その日、山形へ行きます列車の中で、その列車が一つ大きな川を越えました。川を越える時、彼は向こう側に坐ってたんですけど、「まさしッ、まさしィ」って僕を呼ぶわけです。
「なんだよォ」っていいますと、
「まさし、あのさァ、この川なんて川」
「情無えなあ、そこに立て札があっただろッ、大きな立て札がァ。書いてあるだろッ」
「う、うん、書いてあるんだよね。何て読むの?」
「バカだなあ、おまえ、小学生でも読めるぞォ。最上川だよ」
「ハハァ! ソウッ、最上って書いてもがみって読むのねえ」
”もがみうし”は、その日の夜の出来事でありました(爆笑)。

九州へ行った時のことでした。僕は飛行機が嫌いですから汽車で帰ることになってたんです。彼らは宮崎から飛行機に乗るんです。ちょうどその頃、航空機の事故が続けて起きました。それでね、僕は嫌みを言ったんですよ。飛行機事故ってのは続けて起きるんだよとか、あのエンジンはただネジでとめてあるだけだから、ゆるんで落ちるとも限らないだぞとかね、言ったわけ。

そしたら彼ね、本当は飛行機が怖いのね、だもんだから、真剣な顔で僕のこと怒るんです。
「まさし、いい加減にしろよなッ。そんな機嫌の悪いこというなよッ」
機嫌の悪いことって何だろうってよく聞いてみたら”縁起”の悪いことだったんですね(爆笑)。

本当に素敵な男であります。まあ、どこまで冗談でやってるんだか最近、わからないところがあるんですけど、これがまた彼の魅力であります。とっても素晴らしいマリンバ奏者、宅間久善君です、よろしくどうぞ(拍手)

あることがきっかけで、さだまさしの「神出鬼没コンサート」というものがはじまった。バンド構成も通常のツアーよりもかなり削っているため、この「メンバー紹介」ではバンドが3名になっている。実際は、これにベースやドラム等も加わりますのでご安心を。現在も「アコースティックコンサート」と、名称こそ変わったが、全国のいろいろな町村を訪ねてはコンサートが開かれている。

なお、神出鬼没コンサートについては、名作劇場の方にそれに関するトークを掲載してますので、そちらを御覧下さい。

トーク選択ページに戻る