シラミソードー 第二番
   噺歌集Wより抜粋(’84.6.25. 岡崎市民会館)

前回、わたしは『シラミ騒動』という美しい曲を作りました。お客様もね、まわりの人たちも最初聞いたときは僕を尊敬してくれました。天才だッ(笑)。ところが、これがレコードになりました。『それぞれの旅』というシングルのB面に入っています。するとね、聞き慣れてくる。と、だんだん当たり前になってくるんですね、これが残念だ。
「これぐらい、俺たちだって出来るよなあ、やろうと思えば」
そういうけしからんことをいうやつが増えてまいりました。わたしはもう一度尊敬されるにはどうしたらいいだろう、いろいろ考えました。尊敬をわが手に!

これで二番を作れば尊敬してもらえるんじゃないだろうか(笑、拍手)、ありがとうございます。そこで二番にチャレンジしてみました。で、ふっと考えた。ちょっと待てッ!歌の場合、一番と二番はふつう同じメロディーだ(笑)。ところがこれを同じメロディーにすると同じ歌詩になってしまう(爆笑)。フフフッ、よしッ、違う歌詩にしよう。違うメロディーでもいいじゃないかッ、組曲にすればいい!(笑)

シラミが捕まったところまで一番で歌いましたね。ですからそのあとを広げていきます。見られそう、知られそうだったシラミが捕まって、いろいろ調べられています。これを過去形にしてやればいいんです。ミラレシ シラミ シラレシ シラミ これで鮮やかな過去形になりました(笑)。うんッ、いい一行目だ! と音にして驚いた。信田さん、ミラレシ シラミと弾いてください。(ピアノ演奏)暗いんです(笑)、むちゃ暗いんですよ。よしッ! 二番はマイナーにしよう(笑)。シラミの悲しさを歌ってやろう。

研究者がシラミを捕まえて研究してるんです。ところがいくら研究したってこれはシラミです。急にシラミが別のものに変わるわけじゃない、カキの種に変わるはずがない、ゴキブリに変わるわけでもない。いくら見たってシラミだなあなんて研究者が悩んでる。第二行です。ミレド シレド シラミ ファ シラミ (笑)、ここで、一番で使えなかったファの音が初めて使えたんです(笑、拍手)。信田さん、ちょっと弾いて(〜演奏)。ねえ、暗い(笑)。この哀愁を帯びた旋律に研究者の苦悩がよく表れております。

で、この苦悩をさらに深くするために、皆さんに追っかけてもらいます。わたしが シラミ ファ シラミ といったら、そっちでシラミ ファ シラミと追っかけて歌ってください(笑)。わかったねッ、責任とんなさいよッ(笑)。これを文学用語で悲しみの追い打ち(笑)、音楽用語で輪唱と申しますね。

研究者としてはこれはシラミだ、どう見たってね。だけど、みんなこれの研究発表を待ってるわけですから、これをどういうふうに伝えたらいいんだろう、悩んでます。三行目、ファー ドーシラソー(爆笑、拍手)。ここでわたしはふっと考えたことがある。ファとドの間にラを入れたい。ところがファー ラー ドーシラソ だとメロディー的にはいいけども、ラが入ると意味をなさなくなってしまいます。そこで、よしッ、このラの部分、ここだけドイツ語のアーを使ってファー アー ドーシラソ(笑)。同じくアーを使います。研究者が悩んでると、助手がべつにシラミっていえばいいじゃないのっていう。ファー アー ソーシラソ(笑)、研究者の自問自答です。

で、最後に シラミ シラミ シラシラミ ソードー。ここで前回のように上にあがるとそこだけ明るくなってしまう、そこだけメジャーになってしまう、いけないッ。ソードーって下へさがろう(笑)。そうすると悲しみの雰囲気が出てまいりますね。

もちろん、オチが必要です。オチはどういうオチにしたか、これは実際に歌の最後を聞いていただくとしましょう。これを信田さんに聞かしたらまた盛り上がってね、編曲してきたのが鮮やかです、交響詩としてきた(笑)。

(『シラミ騒動第二番』の演奏...曲の最後に「ファラッ」と入る)
ただいまのファラッというのは、いろいろ騒いでるうちにシラミが逃げた音でございます(爆笑、拍手続く)。

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