ショートショート

コンサートトークは、大作と呼ばれるものの中には20分間というものもザラ。本当に我らが「まっさん」はコンサートで笑わせてくれます。逆にこんな短い中にも隠れた名作もあるんですよ。ということで、ここでは、結構短めのトークを集めてます。

小田急線に乗ったら
   噺歌集Wより抜粋(’84.5.30. 東京厚生年金会館)

今日ッ、そうッ、今日ね、久し振りに小田急線に乗ったッ(会場から、エーッ! という歓声)。エーッじゃないッ(笑)。今日はね、町田、小田急線の町田へ行ったッ(エーッ、買い物ォ? という声)、ハハハッ、わたしが町田へ買い物へ行くか? 行きません(笑)。

じつはね、町田にありますTBSというテレビ局のスタジオに行ったんですよ。六月六日の深夜に放映される「歌謡アンナイト」という番組に出るってんで、町田のスタジオへ行こうと思って、小田急線に乗ったッ!(会場から、西武線は〜ッ、という声) 西武線ですかッ? 西武線っていうと、ひょっとするとッ、あのッ、埼玉方面へ向かう、あの電車ですかッ(爆笑、拍手、ひど〜いッ、差別〜ッ、の声)、どうしてひどいんですか? あの、埼玉方面へ向かう電車ですかって聞くのが、どうしてひどいんですか?(笑) わたし、嘘いってますか?(笑) なにか、埼玉という響きに、あんたたちはやましい気持ちがあるんではないですか(爆笑、拍手)。

わたしはだいたい私鉄沿線ってのが好きなんです。いま、京成線の沿線に住んでます。京成線も美しいですよォ(笑)。もうね、歩いてすぐのところに踏切りがあるんですよ。それがね、真夜中でもカンカンカンカンッて鳴るんです。その踏切りの音を聞きながら自分のリズムにしてるところがあるんですね。夜、ずーっと仕事しててね、あのカンカンカンカンッていうのが聞こえてくると、おッ、朝だッ、もう人々は働き始めているッ(笑)、もう、そろそろ寝なくてはッ(爆笑)。

まあしかしね、小田急線に乗って驚きましたよ。学生さんが何時でも乗ってんのね。午前中だったですけどね、僕が出かけていったのは。そうすっとね、中に目ざといのがいるんだな。わたしなんか、眼鏡はずして歩いてんですよ、で、色黒ですよ、オデコだけとくに黒いんですがね(笑)。小田急線に座席にすわりながら、こう、新聞を読んでおりました。そしたら、高校生の女の子、発見したわけですね、さだまさしを(笑)。

隣の車両から、どういう鼻をしてるんだかわからないんですが、ツーッと二人の女子学生が現れたんです。たいがい二人連れの女の子って手をつないで来るね、あれが男子学生だったら気味悪いね(笑)、張り倒すよ、わたしは。

女の子二人が遠くの方で僕を見てるんです。で、コソコソなんかしゃべってる。たいがい一人は気の強そうな女の子、もう一人はものすごく気の弱そうな女の子。そうすっと、気の強そうな方の女の子がいってるの、
「(可愛いい女の声で)そうよォ」(笑)
聞こえているんです、ちゃんと、わたしはね(笑)。
「そうだってばァ」
そしたら、気の弱そうな女の子の方が、
「違うわよ、違うわよ、違うわよ」
僕に聞こえるんじゃないかと思って、消え入りそうな小さな声で否定してるのね(笑)。
「(可愛いぶりっこ声で)そうよそうよ、どう見たってそうよォ」(笑、拍手)
「でも、もし違ったらどォするの?」

うだうだうだうだいってると思ったら、そのうち、クラスに一人くらい必ずいるんですね、さだまさしに詳しいっていう変わったのが(笑)。そういうのを連れてくるわけ、証人を連れてくるのね。これがまた、たいがいかっぷくがいいんです(笑)。そのかっぷくのいい子がたいがい眼鏡をかけててね、こう、眼鏡に手をかけてジーッと僕を見てたかと思うと、
「(力強い女の子の声で)そうよッ(爆笑)、あれはさだまさしよッ」
「ほ〜らッ、そうじゃないッ」
「ええ〜ッ! そうだったのォ」
「アハハハッ」
笑ってそのまま帰りました、その人たち(爆笑)。ただ、笑うだけに確認しにきたんです。もう腹立ちますねえ。いろんな人がいます。

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